初夏の山中湖

投稿者 :榎本千絵 on

山中湖では、春と夏が一度にやってきます。

今頃になって、嬉しいことに、新芽が出揃い、そして、初夏になりました。

イボタの花がよい香りです。


夕方、森の湿った苔と木々、元気に働いた小鳥たちの良い匂いが
うっすらとした靄と共に立ち込める頃、
ヤマガラのガラちゃんが、大きな音で、
「トントントン」とエサ台を叩く音がします。

急いで行ってみると、私の顔を見て、
羽を膨らませ気味にして震わせるジェスチャーをしています。

今日は、寝る前になって、「赤ちゃん鳥が卵から孵ったよ、子育てしているよ。」
とわざわざお知らせにやってきてくれたのです。

ヒナは、エサをもらうときに、羽を膨らませて、
震わせてパタパタするので、その様子を再現してくれたに
違いありません。

しばらく夕方のこの頃にしか来なくなったガラちゃんは、
きっと子育てで忙しいのだろうと、思っていましたし、
ガラちゃんに、私も両手をバタバタ震わせて、「チチチ・・」と鳴いて見せ、
「赤ちゃん、連れてきてね。」としっかり伝えてあったのです。

それで、やっと、このしぐさをしてくれたのだから、
やはり、ヒナが孵ったのだと思います。

今年も、親よりも身体の大きいペンギンのような
グレーのヒナたちを連れてきてくれるでしょうか。

「ガラちゃん、子育て頑張って偉いね。赤ちゃん、連れてきてね。」と
両手をバタバタ震わせて、「チチチ・・」と鳴いて見せると、
ガラちゃんは、それを見て、すぐに遠くに飛んで行ってしまいました。

ここ3年連続で、ガラちゃんは、赤ちゃんが生まれると、
このようにお知らせをしてくれました。

以前、巣からヒナが飛び立った時は、大変な喜びようで、
家の周りを何度も鳴きながら飛び回って、教えてくれました。

子育て中のガラちゃんは、本当に一生懸命に働いてエサを取り、
冬の間エサをもらって丸かった身体も、
心なしか、細くスッキリとしたようです。

夕方には、もうヘトヘトな様子です。

そんな頑張り屋の小鳥たちの役に立ちたくて、
今年の春に、小さなケヤキや富士桜の苗木や、シジュウカラの大好きなマユミの
木を植えた時には、小鳥たちはそれはそれは喜んでくれました。

(一昨年に、シラカシやソヨゴを植えたときは、
それほどでもありませんでした。)

やはり、野鳥には、地のものが良いようです。

朝には、日本リスが来て、ひまわりの種がエサ台にないときには、
以前は、「シャカシャカシャカ」という控えめな音、
それから、「トコトコトコ」という、すこしはっきりとした音に変わり、
起きないと、「タカタカタカ・・ビヨ~ン」と大きな音で、
私たちを起こそうと意思表示をしてくれます。

小さい頃から野生のリスを見ることを憧れていた私にとっては、
まさに夢のような出来事ですが、
眠くて起きられないこともあります。

夜やって来る、甘えん坊アライグマのために、
ひまわりの種を置いておくのですが、
その残りを明け方来たリスが食べます。

そして、後でまた来て、種がすっかりなくなっていると、
こうして、起こすのです。

春と初夏が一度に来た山中湖では、冬の静けさが嘘のように、
それはもうにぎやかに小鳥たちが囀り、耳をすませば、
とても心が清まるようです。

初夏の山中湖のお便りでした。

 


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